バーチャル・リアリティ


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人間が積み重ねてきた経験は「技術」「思想」「智恵」など様々に呼ばれます.
伝え方も人それぞれ.上手も下手も.時には伝えることを職業にする人も居る.

水泳選手は,試行錯誤して身につけた泳ぐ「技術」を武器に競う.
ミュージシャンは,音楽や言葉や映像を用いて「思想」を伝える.
我々一般人は,生活の「智恵」を家族や友人と共有しつつ生きる.

こういった経験の吸収や発信をブログで繰り返している中で,
改めて「経験の伝承」って難しいなぁと日々痛感しています.

この「経験の伝承」について,バーチャル・リアリティの観点から
取り組んでいる方の講演に出会ったので,要点をメモしておきます.


経験は日々当然のように積み重なるので,言語化が難しく暗黙知化されがち.
それをいざ人に伝えようとしても,どうも上手くいかない.ポイントも不明.

だから,「技術は盗んで覚えろ」とだけ教えて見よう見まねさせたり,
指示語や擬態語を乱用して「ここをこんな風にグイッと」と言ったりする.
伝統芸能やスポーツにまつわる技術の伝承は,その最たる例だと思います.

それもそのはずで,人間が五感を駆使して得た経験を他人に伝える時,
五感の情報を省いた言葉だけで伝えようとすると当然無理が生じます.
この意味で,ミュージシャンによる思想の伝承は合理的なのでしょう.

では,伝統芸能やスポーツにまつわる技術の伝承に五感を持ち込めないのか.
この課題に取り組んでいるのが,バーチャル・リアリティ分野の研究者です.

例えば,和紙を作る工程の一つ「紙すき」の場合.
目線をどう動かすのか,どんなリズムで手を動かすのか,
熟練技術者の感覚をコンピュータに取り込んだのち,
若手技術者にそれを追体験させるという研究があります.

この技術伝承支援を通じてコツを掴んだ人もいるとか.
凄い技術をもった先輩本人になることは出来なくても,
コンピュータを通じて感覚そのものを体験出来たなら,
技術習得の大きなきっかけを得られそうな気がします.

伝える過程でどうしても分離してしまう経験と五感を,
バーチャル・リアリティが再統合するというわけです.


バーチャルという言葉を聞くと,ゲームの世界が頭に浮かびます.
人間が現実世界に似せて造り上げた「仮想」世界というイメージ.
しかし,英語のvirtualを英英辞典で調べてみると…

You can use virtual to indicate that something is so nearly true
that for most purposes it can be regarded as true.
- Quoted from “COBUILD for Advanced Learner’s English Dictionary” -

とあるように「仮想的」ではなく「実質的」と訳した方が良さそうです.
「現実には不可能でも,その本質を利用者に提供する技術」という意味が,
バーチャル・リアリティという言葉には最初から込められていたんですね.

今回参考にしたのは,廣瀬通孝さんの講演です.
ありがとうございました.

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