映像 Video
映画『阪急電車 片道15分の奇跡』（三宅喜重, 2011.04.29）を観ました．
私鉄電車とその停車駅を舞台に，悔しさを抱えた人間の
一期一会の連鎖が生み出す「人生の機微」を描いた映画．
無関係な人間に毎日囲まれているようでいても，
同じ空間にいるだけで微細な影響を受けている．
全く違う世界を生きてきた人間同士が偶々出会う．
タイミングを味方につけて交流したいと思ったら，
想像力フル活用で一歩先へ踏み込んでみるといい．
映画“Inside Out”（Pete Docter, 2015.06.19）を観ました．
想い出に生きる人間が転びながらも前に進む姿を
脳内の感情に命を宿すことで力動的に描いた映画
僕を動かす感情に仮面を着せて先へ行く．
忌み嫌っていた涙が自他を繋いでくれる．
独りになると，想い出と感情が目覚める．
そこで見つけた虚しさも僕の大切な友達．
映画『百円の恋』（武正晴, 2014.12.20）を観ました．
自堕落な女性が安っぽい恋を経てボクシングに出会い，
鋭い眼光で底辺生活に挑み闘い続ける姿を描いた映画．
情熱を抱いて何かに打ち込みたいなら，きっかけは何でもいい．
目標を見据えて打ち込んでいること自体が，快感になってくる．
大舞台の直前，五感が研ぎ澄まされ全ての感覚が増幅することがある．
世界がスローモーションに見え，鳥肌が立つ．緊張を感じながら挑む．
「立てよ，この負け犬！」
古谷振一さんの鉛筆画を参考にして，人物画を時々描きます．
YouTubeのチャンネル“shtt4881”で配信中．
被写体の毛髪や皺の一本一本まで見抜き，その光を捉えた人物画．
まるで写真のようで，被写体の魂すら宿っているように感じます．
『ぶらり途中下車の旅』によると，アトリエは富山市にあるそう．
モデルが，人間の内面まで感じさせる表情を顔に備えて，
写真家が，モデルの顔に表れた一瞬の表情を永遠に留め，
その全てを受けとめた鉛筆画家が，腕と鉛筆で表現する．
努力や才能といってしまえばそれまでですが，
ひとりの人間が持つ良さを見抜きそこから影響を受ける人がいて，
さらにその影響が伝播していく「存在の肯定」の連鎖を感じます．
映画『茜色の約束』（塩崎祥平, 2012.02.25）を観ました．
日系ブラジル人の「サンバ」と華やかな「金魚」を登場させながら，
奈良県大和郡山市を鮮やかに描き出したファンタジーコメディ映画．
ファンタジックな物語は，時空を超えた意味を現実世界に与えてくれる．
その時その場所その人の強い感情の結晶であり，単なる夢物語じゃない．
古墳や家屋の歴史的意味なんて知らない人間にとっては
この感情にこそ価値があって，だからこそ語り継がれる．
この映画の主役は「大和郡山市」あるいは「金魚」なのでしょう．
人間はあくまで脇役だから，細かなリアリティは気にしないこと．
公式ホームページはこちらです．撮影風景やロケ地マップは必見．
文部科学省制作の動画をよく観るようになりました．
YouTubeのチャンネル“mextchannel”で配信中．
NHK教育テレビに近いコンテンツが多く見られますが，
ここでは，さらに現実問題に歩み寄った姿勢が伺えます．
文化・科学・教育・スポーツなど多岐にわたる分野に対して，
立場の違いまで考慮した上で様々な視点から語られています．
映画『娚の一生』（廣木隆一, 2015.02.14）を観ました．
才色兼備ながらも不器用な30代のキャリアウーマンと，
情熱的な一方で恋愛に少し距離をおく50代の大学教授．
まっすぐな二人が出会って惹かれ合う様を描いた映画．
他人同士が同じ家の中で同じ時間を過ごすということ．
他人の触れる世界を肌で感じる厳しさと優しさがある．
食事の時間が象徴的で，その人の生きる姿勢が表れる．
ええ女とええ男が，何の因果か巡り逢っては恋をして，
一生かけて愛せるかといえば，時間がそれを許さない．
疑心暗鬼になっても，真直ぐな背筋を見つめればいい．
映画『リトル・フォレスト』夏／秋 – 冬／春 （森淳一, 2014.08.30 – 2015.02.14）を観ました．
とある理由から東北の小さな集落で自給自足に近い生活を送る少女を，
農業・調理と並行する独白を中心に，厳しくもゆったりと綴った映画．
生きるために食べる，食べるために生きる．それをただ繰り返す．
植物・動物・人間も，気候・住居・道具も，そこにあるすべてに
意味が宿されていて，それは過去と現在から未来へと積み重なる．
何となく遊びのように遣っている言葉は，ほとんど意味をもたない．
作物を中心にした環境への観察眼が不可欠で，言葉はあくまで補助．
その洞察力を備えた人の発信する絞った言葉には，大きな力が宿る．
原作の漫画『リトル・フォレスト』2巻についてはこちらです．
映画『リリイ・シュシュのすべて』（岩井俊二, 2001.10.06）を観ました．
インターネットの掲示板を用いて書かれた実験的な小説を原作として，
とある歌手の曲を聴く中学生たちが抱える，心の光と闇を描いた映画．
物事を白か黒かの両極だけで捉えると，世界が理想と現実とに二分される．
その価値観のまま生きるつもりだった，当時の自分の罪が現れては消える．
漫画も小説も映画も音楽も，明るい希望や暗い絶望だけを描いてはいない．
それを自分の生活の文脈で感じた上で，白黒以外の彩色を試みる姿勢が鍵．
YouTubeでhotdiggedydemonさんの”Jerry”と”Jackie”を見つけました．
このチャンネルを一見すると，暴力的でうるさい作品が並ぶばかりで，
日本メディアのパロディもその中にあり，見過ごしそうになりますが…
オリジナル作品の”Jerry”シリーズ，中でも”Jerry”と”Jackie”は
言語を削っており，日本人にも通じるテーマを内包しています．
まず1作目の”Jerry”を中継．
次に3作目の”Jackie”を中継．
同シリーズの他作品にも関連性はあるのですが，言語に頼っているために
少しうるさく上記2作品のような魅力に欠けるので，ここでは割愛します．
日本では治安が比較的改善されており，ここまで露骨な話は少ないですが，
男女の金と身体が対になって語られるのは，良くも悪くも日常茶飯事です．
どれだけ人間として惹かれあった者同士でも，共同生活を望むのなら，
金と身体の問題を避けて通ることは難しく，言葉を尽くしたところで
「金（身体）が目的なのかも」という疑念がふと湧いてしまうことも．
単調な毎日を繰り返すうち，自分が利用されているようにしか感じられず，
人間としての自信を失い，酒や薬などの快楽に溺れ，死に向かう人もいる．
日々加速する現代において，他人はもちろん自分に対しても，
その存在を肯定し支えられるような態度をとり続けていたい．