ビートについて その4


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ビートについてのおぼえがき,第四弾.
今回は『ビート』と対人関係について.


Beat & Others

今回の記述は,ビートの根本的なイメージに限りなく近い.
せっかくなので現時点でのビートの定義を記しておきます.

現実世界を生きる自分に対して,理想を抱き続ける内なる自分.
無意識下で理想を更新し続け,現実との差異に敏感に反応する.
唸りのような不快感を生じさせて,現実世界に行動を喚起する.

以下の文章中で【自分】【他者】と記述してある箇所には,
ビートを抱えた存在であることを強調する意図があります.


まず【自分】との内的葛藤について考察してみます.

アイデンティティを確立しようと夢を抱いて理想へと突き進む一方で,
現実は理想に追いつけない.努力し続けて理想に近づけば近づくほど,
勝手に成長する理想像との隔たりに苦しめられる.夢追いは非現実的.
だからビートに導かれ自分の理想を演じて自己同一化を図りつつ,
現実的な生活を送るために理想を一部諦めてビートと距離をとる.

この過程で理想が現実を置き去りにしたり,
あるいは逆に現実が理想を無視し続けたりすると,
自分についての現実像と理想像が完全に分離して,
人格の分裂を引き起こす.自分が自分でない感覚.

何か作品を生み出す過程もこれと似たところがある.
完成像を同定し,そこへ到達するための技術を身につけたら,
理想へ近づいていく創作過程と理想から遠ざかる破壊過程を
試行錯誤の間ずっと繰り返す.生みの苦しみとはこのことだ.

締め切りのせいで,理想を一部諦めて作品を発表することになる.
締め切りのお陰で,理想に追いつけない苦しみから解き放たれる.
一度諦めた理想は,締め切りの後で個人的に追及すればいいのだ.


次に【他者】との外的葛藤について考察してみます.

赤の他人と縁を結び,その人に「こうあってほしい」という理想像を抱く.
しかし他者についての自己中心的な理想像が現実像と一致するわけはない.
理想を全て他者へ押し付けるのは非現実的.一部を諦める必要性が生じる.

他者に理想像を抱いて近づく過程は,友人・恋愛・養育などの関係にみられる.
対人関係の初期に顕著で,抱擁・依存をどこかで求めている自己中心的な関係.
他者への理想像を諦め遠ざかる過程は,親友・結婚・独立などの関係で起こる.
抱擁・依存をどこかで諦める必要があるが,これは永く関係を続けるため知恵.
互助と抱擁・依存の間を常に行き来することで,密な人間関係を形成していく.

この過程で理想が現実を置き去りにしたり,
あるいは逆に現実が理想を無視し続けたりすると,
他者についての現実像と理想像が完全に分離して,
対人関係の断裂を引き起こす.赤の他人に逆戻り.
復縁することのない不可逆な断裂になりかねない.

この断裂を嫌って他者に理想を抱くことを止めてしまうと,
無縁と互助の間を行き来する,疎な人間関係が形成される.
「おひとりさま」などの発想はここからくるのではないか.


Beat & Conflict

さてここまでは【自分】が【他者】を眺めているだけの第一段階.
ここからは【他者】が【自分】を眺めているという意識を想定し,
この二つを重ね合わせた状態すなわち第二段階について考えます.

人の心に 土足で入り込んで
ドアも窓も勝手に 開け放ったあなたの
おかげで僕は人生を 台無しにしちゃうような
素敵な風景に 出会えたんだ

「パーフェクトライフ」(amazarashi, 2011)で唄われるフレーズ.
【自分】との内的葛藤として捉えていた現実と理想のせめぎ合いに対し,
【他者】が踏み込んでくることで,現実と理想のそれぞれが更新される.

君はそいつを嫌いになってしまったと言う
もう一緒にはいられない 消えてほしいと言う
内側から見たそいつを僕は知らないけど
外から見たそいつならよく知っているから

半分しか知らないままに答えを出すのは
なんかすごくとても あまりに 勿体ないから
外からずっと見てた僕の話を聞いてよ

「謎謎」(RADWIMPS, 2009)で唄われるフレーズ.
他者から見た自分についての現実像は,自分から見たそれとは大抵異なる.
この歌詞のように自尊心の低い人のアイデンティティ確立を支えてくれる.

僕の好きな君 その君が好きな僕
そうやっていつしか僕は僕を大切に思えたよ

「me me she」(RADWIMPS, 2009)で唄われるフレーズ.
同様に,他者が抱く自分についての理想像は,自分が抱くそれとは異なる.
密な人間関係を求める過程で,少なからず他者が抱くそれを演じるにつれ,
自分が抱く自分についての理想像が更新され無意識にビートが育つのです.

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